【思考力を鍛える#3】情報を把握する力(算数編)
前回の「情報を把握する力」について、具体的にお話をしてみたいと思います。
本来、思考力というものに教科やジャンルというのはないのですが、よく取り沙汰される算数・数学のうち、今回は算数について具体的に見てみます。
◆前回の記事はこちら
≫【思考力を鍛える#1】思考に必要なのは4つの能力
≫【思考力を鍛える#2】情報を把握する力
よくある算数の授業(やばめです)
まず、次の問題を見てみてください。
問題 弟が家を出て駅に向かって歩き始めて100m進んだところで、兄が家を出て、弟と同じ道を駅に向かって歩き始めました。弟の歩く速さは毎分50m、兄の歩く速さは毎分70mです。兄が弟を追いこすのは、兄が歩き始めてから何分後ですか。 |
これは学校では習わない中学受験ならではの旅人算と言われるものです。これには公式があります。
- AくんがBくんに追いつく場合
(2人の間の距離)÷(2人の速さの差)=(追いつくのにかかる時間) - AくんとBくんが出会う場合
(2人の間の距離)÷(2人の速さの和)=(出会うのにかかる時間)
今回の問題は「追いつく」タイプなので①の公式を使います。授業でも、公式を教えて解説をして、宿題では公式を使って解く練習をします。公式を使ったら解ける問題になっているので、当然答えは求まります。上記問題なら、100÷(70-50)=5分後と答えが簡単に出るわけです。
授業を受けた子どもたちに「授業はわかる?」と聞いても、「簡単!わかるよ!!」と返してくることでしょう。どこにも分からない話はありませんものね。
実際の中学入試の問題
ここで、実際の中学入試の問題を見てみましょう。「旅人算」の問題です。(奈良学園中学校の問題)
問題 2つの地点PとQは一直線の道でつながっています。Aさんは8時ちょうどにP地点を出発し、Q地点に向かって一定の速さで歩きました。すると、9時ちょうどにQ地点に着きました。Bさんは8時6分にQ地点を出発し、P地点に向かって一定の速さで歩きました。すると、P地点とQ地点のちょうど真ん中の地点でAさんに出会いました。 Cさんは8時ちょうどにQ地点を出発し、P地点に向かってAさんと同じ速さで歩き始めましたが、8時18分に忘れ物に気づき、走ってQ地点にもどり、忘れ物を取るとすぐに、走ってP地点に向かいました。すると、8時44分にP地点に着きました。Cさんの走る速さは一定で、忘れ物を取る時間はかからなかったものとします。このとき、次の問いに答えなさい。 ⑴ BさんがP地点に着いたのは何時何分ですか。 ⑵ Cさんの走る速さはAさんの歩く速さの何倍ですか。 ⑶ AさんとCさんが出会ったのは何時何分ですか。 ⑷ CさんがBさんを追い越す地点をRとするときPR間の距離とPQ間の距離の比を最も簡単な整数の比で表しなさい。 |
どうですか。先ほどの授業で習った解き方の延長上で解けるようになりそうでしょうか。思考力がある子は解けそうでしょうか。
正直、解けなさそうです。そして解けない理由は、「思考力がないから」とかではなさそうです。
この問題は問題文を読んでいる途中で話についていけなくなります。頭の中で状況をイメージできないわけで、問題文の言っていることを把握することができません。つまり、問題にかかれていることが理解・把握することができないために思考ができず、その結果解けないという状況になるのです。いってしまえば、思考力以前の問題なのです。
まずは問題文を把握することから
問題を解くためには、まずは問題文に書かれていることを理解・把握していく必要があります。そして、この入試問題には絵が必要不可欠です。私が書いてみると次のような感じです。
もちろん、この絵をかけるようになるためには練習が必要です。簡単な問題を解くときから絵をかくようにして、絵をかくスキルをアップさせていかないと上手くはいきません。
けれども、上手くかけると問題は解けそうな気がします。なぜなら思考を始めることができるからです。
まとめ
「思考力がない」「思考が苦手」という話が出てきても、実はそれ以前の「情報を把握する」ということができていないということがほとんどです。
思考力を鍛えたいならば、まずは問題文をていねいに読みながら話を整理していく練習をして「情報把握力」を養っていきましょう。算数ならば、絵や図、表、グラフなどをかくことがとても大切です。
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